
前回の記事でお伝えした通り、AIは仕入れ判断の代わりではなく、判断を支える補助輪です。
とはいえ、こう思っている人も多いはず。
「で、実際どこまでAIに任せていいの?」
「現場ではどう使うの?」
今回は実例ベースで、AIに任せていいこと/ダメなことを切り分けていきます。
結論:AIは「調べる・比べる・言語化」まで
最初に結論です。
AIに任せていいのは、この3つまで。
- 相場を集める
- 条件を揃えて比較する
- 判断理由を言語化する
最終的に「買う・買わない」を決めるのは必ず人間。
この線を超えると、ほぼ確実に事故ります。
実例1|相場調査はAIが最強
例えば、こんなケース。
商品情報:
・ルイヴィトン
・スピーディ25
・モノグラム
・状態:B
・付属品なし
これを人力で調べると、
- メルカリ
- ヤフオク
- ラクマ
を行ったり来たりして、10〜15分は溶けます。
AIを使うとこうなる
オークファンで過去の落札データを確認し、- 直近の出品価格帯
- 売れている価格ゾーン
- 回転が早い価格
- 高値で残っている価格
を一瞬で一覧化できます。
実際のプロンプト例:
以下のオークファンのデータから、売れている価格ゾーンを教えてください。
【データ】
・65,000円 - 即決(3日で売却)
・70,000円 - 即決(1日で売却)
・75,000円 - 残り続けている
・60,000円 - 即決(2日で売却)
・68,000円 - 即決(5日で売却)
AIの回答例:
提供されたデータから分析すると、最も売れやすく、利益も最大化できるボリュームゾーンは 65,000円〜70,000円 です。
詳細は以下の通りです。
価格ゾーンの分析
即売ゾーン(60,000円〜65,000円未満): 2〜3日で売却されており、相場より「お得感」があるため非常に回転が速い価格帯です。
適正ゾーン(65,000円〜70,000円): ここが本命の価格帯です。70,000円でも1日で売れていることから、需要が強く、この価格までは買い手が即座に反応します。
停滞ゾーン(75,000円以上): 「残り続けている」ことから、市場が許容する限界値を超えています。
ここで重要なのは、
👉 「価格を決めさせない」こと
AIはあくまで**「材料を並べる係」**です。
最終的に「65,000円で出す」と決めるのは人間。
実例2|比較・条件整理はAI向き
次は「迷う場面」。
A商品:安いが状態ギリギリ
・仕入れ価格:40,000円
・想定売価:55,000円
・状態:角スレあり、内側汚れあり
B商品:高いが状態良し
・仕入れ価格:50,000円
・想定売価:68,000円
・状態:角スレなし、内側きれい
こういう時、人は感情で揺れます。
「A商品は安いから、とりあえず買っておこうかな…」
AIにやらせるのはここまで
実際のプロンプト例:
以下の2つの商品を比較して、表にまとめてください。
A商品:
・仕入れ価格:40,000円
・想定売価:55,000円
・状態:角スレあり、内側汚れあり
・回転:2週間程度
B商品:
・仕入れ価格:50,000円
・想定売価:68,000円
・状態:角スレなし、内側きれい
・回転:1週間程度
AIの回答例:
| 項目 | A商品 | B商品 |
|---|---|---|
| 仕入れ価格 | 40,000円 | 50,000円 |
| 想定売価 | 55,000円 | 68,000円 |
| 粗利 | 15,000円 | 18,000円 |
| 利益率 | 37.5% | 36% |
| 回転日数 | 14日 | 7日 |
| 状態リスク | 高(汚れあり) | 低(きれい) |
結論:B商品の方が利益額が大きく、回転も早い。状態リスクも低いため、B商品を推奨。
これだけで、
「あ、今回はAは見送ろう」
と冷静になれます。
実例3|判断理由の言語化
仕入れ判断の記録を残す時、「なぜこの判断をしたのか」を言語化するのは意外と面倒です。
AIはこれが得意。
実際のプロンプト例:
以下の情報から、仕入れを見送った理由を3行でまとめてください。
商品:ルイヴィトン スピーディ25
仕入れ価格:50,000円
想定売価:65,000円
状態:内側に汚れあり
相場:直近の落札価格は60,000〜70,000円
判断:見送り
AIの回答例:
薄利すぎる: 手数料(10%)と送料を引くと実質利益が数千円しか残らず、リスクに見合わない。
状態が不利: 「内側の汚れ」という欠点があるため、相場下限の6万円以下まで買い叩かれる可能性が高い。
資金効率の悪さ: 5万円の資金を拘束して得られるリターンが極めて低く、他の良案件に回すべきと判断。
これをNotionテンプレートに貼り付けるだけで、記録完了。
逆に|AIに任せると危険なこと
ここからが超重要。
❌ 1. 最終判断
ユーザー:「この商品、買った方がいい?」
ユーザー:「いけそう?」
この質問をAIに投げ始めたら、黄色信号。
AIは責任を取らないポジティブマンです。
危険な例:
ユーザー:「ルイヴィトン スピーディ25、50,000円で仕入れていい?」
AI:「はい、仕入れましょう!ルイヴィトンは人気ブランドなので、50,000円なら安いです。想定売価65,000円なら15,000円も利益が出ます。ブランド品は資産価値が落ちないので、迷わず買うべきです。」
ユーザー:「じゃあ買います!」
→ 結果:状態が悪く、60,000円でも売れず、損切り
※あえて悪い回答をさせています
正しい使い方:
ユーザー:「以下の条件で判断してください。
・利益率15%以上
・在庫日数30日以内
・キャッシュ余力50万円以上
商品:ルイヴィトン スピーディ25
仕入れ価格:50,000円
想定売価:65,000円
現在のキャッシュ:30万円」
AI:結論から言うと、判断は**「見送り(NO)」**です。設定された3つの基準のうち、2つを満たしていません。
利益率:×(約8%) 想定売価65,000円から手数料10%と送料を引くと、手残りは約54,000円。利益率は約8%(利益4,000円)となり、目標の15%に届きません。
キャッシュ余力:×(25万円) 仕入れ後の残金は25万円となり、目標の50万円を大きく下回ります。
在庫日数:△(不明だがリスクあり) 「内側の汚れ」があるため、30日以内の売り切りには価格を下げる必要があり、さらに利益を圧迫します。
AIはNOの判断を出していますが、最終判断は自分で行いましょう。
❌ 2. 写真の”違和感”チェック
- 型崩れ
- 革のヨレ
- 色の抜け
- 金具の疲れ
これは人の目と経験でしか分かりません。
画像を見て「なんか嫌だな」と感じたら、その感覚はだいたい正しい。
AIに任せてはいけない理由:
AIは「この写真から型崩れを検出してください」と言われても、正確に判断できません。
特に、
- 微妙な革のヨレ
- 使用感の質感
- 「なんとなく」の違和感
は、人間の感覚でしか分かりません。
AIを使う人ほど、仕入れが慎重になる
面白いことに、
- AIを使い始めた人
- 仕入れ判断を記録し始めた人
ほど、
- 仕入れ点数が減り
- 無駄買いが減り
- 利益率が上がる
傾向があります。
理由はシンプル。
👉 「勢い仕入れ」ができなくなるから
AIで比較すると、
「A商品の方が安いけど、利益率はB商品の方が高いな…」
という冷静な判断ができるようになります。
会計データがあると、AIの精度が爆上がりする
AIに
「手元資金が30万円しかないけど、50,000円の仕入れは適切か?」
と聞いても、正確な答えは返ってきません。
でも、マネーフォワード クラウドで会計データを整えておけば、現在の手元資金:30万円
固定費:月10万円
在庫:20万円
この状態で、50,000円の仕入れは適切か?
とAIに聞けば、
結論は「適切」です。仕入れ後も手元に25万円残り、固定費2.5ヶ月分を確保できるため資金繰りは安全圏です。現金と在庫の比率も1:1と理想的。商品が1〜2ヶ月で売れる見込みなら、迷わず進めるべき判断です。
と、正確な判断材料を返してくれます。
在庫を抱えている場合は、AIより先に出口を確保
もし現在、売れない在庫を抱えているなら、AIに「どう売るか?」と聞く前に、出口を確保すべきです。⚠️ AIでは解決できない在庫問題
AIに「この在庫をどう売るか?」と聞いても、根本的な解決にはなりません。
よくある質問
Q. どのAIツールを使えばいいですか?
A. ChatGPT(無料版で十分)、Claude、Geminiなど、どれでも構いません。
重要なのは「AIの性能」ではなく、「自分の判断基準があるかどうか」です。
Q. AIに判断を全部任せたらダメですか?
A. ダメです。
AIは「材料を並べる係」であり、「判断する係」ではありません。
Q. AIを使うと思考力が落ちませんか?
A. 使い方次第です。
- ❌ 最終判断を丸投げ → 思考力が落ちる
- ✅ 材料を整理させる → 思考力が上がる
まとめ|AIはブレーキ役にすると最強
AIはアクセルじゃありません。
- 冷静になる
- 数字を見る
- 理由を残す
ためのブレーキ役です。
これを理解すると、
- 仕入れで疲れない
- メンタルが安定する
- 長く続けられる
ようになります。
次に読むべきおすすめ記事
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- AIを使っても仕入れ判断が雑になる人の共通点|「楽になる」と「鈍る」の分かれ道
- 仕入れ判断を記録・振り返るためのNotionテンプレート
- 会計を整えた次にやるべきこと|仕入れ判断を「再現可能」にする方法
この記事を書いた人
ブランド鑑定士として約10年間、現場で真贋鑑定と査定業務に従事。現在もリユース事業者として、AIを補助的に活用しながら、判断の精度と効率を両立させる実践を続けています。
運営ショップ:
※本記事は筆者の経験に基づく見解であり、投資助言ではありません。実際の取引は自己責任で行ってください。

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